※本記事は2026年4月時点の情報です。法改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省の公式ページでご確認ください。
- 研修中は一人で医薬品を販売できない
- 管理者になるには最短1年か2年が必要
- 1920時間の条件クリアがキャリアの鍵
合格したのに「まだ一人で売れない」の正体
登録販売者試験に合格した。販売従事登録も済ませた。なのにドラッグストアの先輩から、こう言われた経験はないでしょうか。
「あなたはまだ研修中だから、一人でお客様に薬を売っちゃダメだよ」
「え、資格を取ったのに何の意味があるの?」と感じるのは当然の疑問です。実は登録販売者には、試験合格後にも「研修中」という期間が制度上設けられているという仕組みがあります。この記事では、研修中の定義から具体的な制限内容、そして管理者要件を満たすまでの期間と条件を、薬機法の規定に基づいて正確に解説します。
「研修中の登録販売者」とは何か
登録販売者には、法律上大きく二つの区分があります。「管理者要件を満たす登録販売者」と「研修中の登録販売者」です。
試験に合格し販売従事登録を済ませた時点では、原則として全員が「研修中」からスタートします。これは実力の問題ではなく、薬機法が定める制度上の区分です。
なぜこのような制度があるのかというと、登録販売者が扱う第二類・第三類医薬品は、お客様の命や健康に直接関わるためです。知識を持った専門家の管理・指導の下で実際の販売を経験することが、医薬品安全管理の観点から求められています。「研修中」を卒業して管理者要件を満たすためには、一定の実務・業務経験が必要です。その期間と条件については後ほど詳しく説明しますが、まず研修中の間に課される制限を正確に把握することが重要です。
研修中に課される3つの主な制限
制限①:医薬品を一人で販売できない
薬機法施行規則(第15条・第147条の2・第149条の6)には、研修中の登録販売者は薬剤師または管理者要件を満たす登録販売者の管理および指導の下でのみ、医薬品販売業務に従事できると規定されています。
つまり、同じシフト内に必ず「管理者要件を満たす資格者」がいなければなりません。採用担当として現場を見てきた範囲では、この規定はシフト管理に直結します。研修中の方だけで閉店作業をおこなうことも、法令上は認められていません。
厚生労働省の通知では「管理及び指導の下に業務に従事する」とは、具体的には、管理・指導者である薬剤師または登録販売者に常に電話で連絡を取ることができ、必要に応じてその場に駆けつけられる状態を意味するとされています。
制限②:名札に「研修中」と明記しなければならない
厚生労働省の通知(令和5年3月31日薬生発0331第16号)により、店舗側は研修中の登録販売者の名札に「登録販売者(研修中)」などの表記をしなければなりません。また店舗内の掲示物にも、研修中かどうかの区別を明示する義務があります。
これは消費者保護の観点から設けられたルールです。お客様が「どのスタッフに相談すればよいか」を判断できるようにするためのものです。
制限③:店舗管理者の代行者になれない
厚生労働省の通知では、「研修中の登録販売者は、店舗管理者の代行者にもなることができない」と明記されています。
店舗管理者が不在の際にその役割を代行するためには、管理者要件を満たしていることが前提です。これはキャリアアップや責任ある業務を担ううえで、重要なポイントといえます。
研修中に「できること」と「できないこと」を整理する
制限を知ると、研修中が不利に聞こえるかもしれません。しかし実際には、医薬品に関わる多くの業務をこなせます。
指導者の管理・監督の下であれば、お客様への医薬品の説明や相談対応にも携わることができます。レジ業務・品出し・陳列といった一般業務はもちろん、医薬品の管理・貯蔵・広告に関する業務もおこなえます。
一方でできないのは、一人でおこなう医薬品のカウンセリング販売や、資格者不在時の単独シフト、そして店舗管理者代行です。「研修中の登録販売者がお客様と会話すること」自体が禁止されているわけではなく、どの程度の監督が必要かは店舗の運用によって異なります。
研修中の期間こそ先輩に「なぜ?」を質問できる絶好のタイミングです。正規の登録販売者になると独り立ちして、相談しづらくなる場面も増えます。研修期間を専門家としての土台を固める時間と捉えることが大切です。
| 業務内容 | 研修中の登録販売者 | 管理者要件を満たす登録販売者 |
|---|---|---|
| 第2類・第3類医薬品の単独販売 | ×(指導者の管理下のみ可) | ◯ |
| 店舗管理者の代行 | × | ◯ |
| 接客・相談対応(指導者の管理下) | ◯ | ◯ |
| レジ業務・品出し・陳列 | ◯ | ◯ |
管理者になるための「3つのパターン」
2023年4月1日に施行された省令改正(厚生労働省医薬・生活衛生局長通知「登録販売者制度の取扱い等について」)により、管理者要件に新たな選択肢が加わりました。現在は主に以下の三つのパターンがあります。
パターン1:従事期間2年以上(従来型)
過去5年間のうち、実務・業務経験の合計が通算2年以上かつ1,920時間以上であること。
この場合、1ヶ月に80時間以上従事した月を「1ヶ月の経験」として算入できます。継続的研修(毎年度の外部研修)の受講は引き続き必要ですが、後述する追加的研修の受講は義務ではありません(資質向上の観点から推奨はされています)。
パターン2:従事期間1年以上+追加的研修(2023年改正で追加)
過去5年間のうち、従事期間の合計が通算1年以上かつ1,920時間以上であり、継続的研修および追加的研修を修了していること。
この場合、1ヶ月に160時間以上従事した月をカウントします。毎日8時間・月20日勤務であれば1ヶ月160時間になるため、正社員や長時間勤務のパートが該当しやすい計算です。
追加的研修は合計6時間以上の内容で、法規・コンプライアンスの基本知識に関する講義や、販売現場でのコミュニケーションのワークなどが含まれます(対面またはオンラインで実施)。これは毎年受ける「継続的研修」とは別の研修ですので、混同しないよう注意してください。
パターン3:1年以上+過去の管理者経験
通算1年以上の実務・業務経験があり、かつ過去に店舗管理者または区域管理者としての業務経験があること(このパターンには1,920時間以上という時間要件の縛りはありません)。
転職などで一時的に実務から離れた方が再び管理者を目指す場合に活用できるパターンです。
| 条件 | パターン1(従来型) | パターン2(時短型) | パターン3(復帰型) |
|---|---|---|---|
| 必要な通算期間 | 2年以上 | 1年以上 | 1年以上 |
| 月間の必要従事時間 | 月80時間以上(24ヶ月) | 月160時間以上(12ヶ月) | 指定なし |
| 通算の合計従事時間 | 1,920時間以上 | 1,920時間以上 | 指定なし |
| 追加的研修の受講 | 不要(継続的研修のみ) | 必要(継続的+追加的) | 不要(継続的研修のみ) |
| 過去の管理者経験 | 不要 | 不要 | 必要 |
「1,920時間」をどう達成するか
この数字が一体どれほどの期間に相当するか、整理してみましょう。
パターン1(月80時間以上)の場合、2年かけて1,920時間を達成するためには月平均80時間の従事が目安です。週2〜3日勤務のパートでも対応できる水準です。一方、パターン2(月160時間以上)の場合は、週5日・1日8時間勤務がひとつの目安となります。毎月の従事時間が160時間を下回ると、その月はカウントされない点に注意が必要です。
実務・業務経験の時間カウントは勤務先によって異なります。医薬品に直接関わる業務のみを算入する職場もあれば、詳細なカウント基準を設けているところもあります。自分の職場のカウント方法を把握しておくことが、キャリアプランを立てるうえで重要です。
(※個人情報保護のため一部設定を変更していますが、実際の採用現場での事例です)採用面接に来た方の中に、2年間働いていたにもかかわらず職場のカウント方法を把握しておらず、管理者要件を満たしていなかったケースがありました。証明書の発行を依頼する前に、職場の人事担当者や上司に確認しておくことをお勧めします。
| 働き方の目安 | 月間の従事時間 | 1,920時間達成までの目安 | 適用パターン |
|---|---|---|---|
| フルタイム(週5日×8時間) | 約160時間 | 1年(12ヶ月) | パターン2 |
| 週4日パート(週4日×6時間) | 約96時間 | 1年8ヶ月(20ヶ月) | パターン1 |
| 週3日パート(週3日×7時間) | 約84時間 | 1年11ヶ月(23ヶ月) | パターン1 |
| 時短・扶養内(週2日×5時間など) | 80時間未満 | カウント対象外※ | 適用不可 |
※月80時間を下回る月は、期間(月数)としてカウントされません。
採用側から率直に話す「研修中」への評価
人事の立場から見ると、研修中であること自体がマイナス評価にはなりません。ただし、採用後にどれくらいで管理者要件を満たせるかを自分で把握しているかどうかは評価の分かれ目になります。
「管理者要件が満たせていない理由が自分でわかっている人」と「何となく働いているだけの人」では、採用後の成長速度が全く異なります。即戦力を求める店舗は管理者要件を満たしている登録販売者を優先する傾向がありますが、成長意欲が明確であれば、研修中の方でも積極的に採用されます。
給与面での差も現実として存在します。資格手当は勤務先によって異なりますが、研修中と正規の登録販売者では差が生じるケースが一般的です。管理者要件を早期に満たすことは、給与アップにも直結します。キャリア設計の観点からも、研修期間をどう過ごすかが将来の選択肢を大きく左右します。
試験合格後にすぐ動き出すべき理由
試験合格後に管理者要件を満たすまでの期間は、勉強の延長線上にあります。実務経験を積みながら医薬品知識を深める、大切な時間です。
注意が必要なのが、「過去5年間」という期限です。一度積み上げた実務・業務経験も、5年以上のブランクがあると管理者要件を失います。資格取得後に長期間働かない状況が続くと、再び研修中からのスタートとなります。
「まず試験に合格してから就職先を考えよう」という方も多いですが、試験勉強と並行して就職先の選択肢を絞っておくことが、合格後のキャリアを加速させます。
研修中の期間をキャリアの土台に変える
研修中という期間は、決してマイナスではありません。管理者要件を満たした正規の登録販売者として独り立ちするための、準備期間です。
制限があるからこそ、先輩から多くを学べます。指導者の管理下で医薬品の販売に携わることで、お客様への情報提供の基礎が身につきます。
2023年改正によって、最短1年での管理者要件達成も選択肢の一つになりました。ただし1,920時間という時間要件は変わっていないため、月160時間以上の勤務という条件はしっかり確認が必要です。目指す姿を明確にしたうえで、試験対策の段階から逆算して準備を始めることが、登録販売者としての道を切り拓く第一歩です。
合格後の現場デビューをスムーズにするためにも、試験対策の段階から制度の仕組みまで学べる講座を選ぶことが有効です。薬機法の規定・医薬品のリスク分類・相談対応のルール。これらは試験問題としても頻出ですが、研修中に実際の現場で直面するテーマでもあります。
FAQ
- 過去のドラッグストアでのアルバイト経験は「実務経験」にカウントされますか?
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カウントされる可能性が高いです。過去5年以内であれば、資格取得前の一般従事者(薬剤師や登録販売者の管理・指導下での実務)としての期間も合算できます。以前の勤務先に「実務従事証明書」の発行を依頼しましょう。
- 研修中から正規の登録販売者になると、給与面でどのくらいの違いが出ますか?
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企業によりますが、資格手当として月額5,000円〜15,000円程度の差額がつくのが一般的です。また、店舗管理者や店長に昇格する要件を満たすことになるため、基本給や役職手当の大幅なアップに直結します。
- 研修中の期間を少しでも有意義に過ごし、早く現場で活躍するにはどうすればいいですか?
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現場で最も求められるのは「お客様の症状に合わせた適切な医薬品選び」のスキルです。これは試験の丸暗記だけでは身につきません。試験対策の段階から、現場の実践を意識した知識を学ぶことが最短ルートです。現場力まで見据えた学習環境を選びたい方は、登録販売者おすすめ通信講座3選|元大学講師の薬剤師が本音で比較の記事も参考にしてみてください。
